【全ての違反者が逮捕されるわけではない】
公職選挙法違反に関しては、どうしてもグレーゾーンが生じますから、理想のように
「全ての違反者を取り締まる」
というのは非現実的です。警察が全ての交通違反者を取り締まることができないのと同じで、公職選挙法違反した人が全員、検挙されるわけではありません。
だから警察が公職選挙法違反で検挙・逮捕するというのは、「見せしめ」的な意味合いを持ちます。
【警察は社会への影響の大きさを見ている】
全ての検挙が無理な状況で、「見せしめ」的な逮捕のみになってしまうので、
「逮捕自体が社会に対してどう影響するか」
ということが「大きな基準の一つ」になっています。つまり、放置したほうが社会への影響が大きいか、逮捕したほうが社会への影響が大きいかを比べて、放置したほうが社会への影響が大きいと言える場合に、逮捕に踏み切るというわけです。
したがって、当選者は「多くの人々の支持を得た人」だと言えるので、公職選挙法違反で逮捕されることは、極めて稀です。逆に落選者は、逮捕されることが多くあります。
【赤信号みんなで渡れば怖くない!?】
また中には、党を挙げて公職選挙法違反を平然とやっている政党もありますが、そういう人々に対する逮捕は、少ないのが現状です。
警察からしたら、「検挙してもロクなポイント稼ぎにならないのに、いざ逮捕してみたら組織的にギャーギャー言われて割に合わない」といったところだろうと想像できます。
【選挙期間中の逮捕】
「ポスターを破った」という行為は、選挙期間中によく見られます。酔っ払いが破った、などの場合もあります。しかしこれが強い意図を持って行われた場合、選挙期間中であっても逮捕されます。これは、
「犯罪に該当するかどうかの基準」が明確なのと、
「放置して選挙結果に影響したら困る」という判断、
の二つの理由が考えられます。
しかし、昨今問題になっているように、
「野次なのか、選挙の自由妨害罪なのか」
の判断が難しい場合などは、検挙・逮捕は選挙期間が終了したのちに行われます。急いで判断して逮捕してしまうと、「警察が選挙に介入した」と言われてしまうからです。
【判断はどこがするのか】
「何が公職選挙法違反なのか」について判断するのは選挙管理委員会です。しかし、
「どの行為やその程度に対して検挙・逮捕を行うのか」を判断するのは警察です。
したがって、候補者が「判断に迷って問い合わせる」のは選挙管理委員会です。
通報者が「こんな違反行為が行われていますよ」と通報するのは、警察のほうが良いでしょう。
今回は、公職選挙法違反と検挙・逮捕について、政界の裏事情を説明してみました。
【筆者】
すが教(きょう):工学博士。専門は量子化学。2010年、当時の政治に疑問を持ち、その後、大阪・神戸で政治家秘書を経験。